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『彼女のカロート』荻世いをら【和書定価新本】

¥2,200

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この本、レジで一気に読んでしまいました。これはとても面白いです。

表題作「彼女のカロート」と「宦官への授業」の二つの中編のうち、まずは「彼女のカロート」を読んだのですが、この一編だけでもすぐにこの本を買っていいと思います。

静謐でうっすらと不穏な空気の中で、美しかったり、醜かったり、ユーモラスだったり、さまざまな質感の描写が織り合わさっていきます。ストーリーはサスペンスといっていいのか、筋は無いというべきなのか、どちらにしても、この世界に引き込まれて没入してしまうことは間違いありません。

耳が聞こえなくなってしまった女性(彼女はほんとうに聴こえないのか、聴こえているのではないのか)との筆談と肉声のやり取りを追いかけるうちに、読んでいる自分の聴覚までも異様に冴えてくる感触がありました。

解説の千葉雅也さんは、この作品を黒沢清監督作品のメタ・ホラーが持つ亡霊性とユーモアの感覚に例えます。

出版社のHPにある作品紹介はこう言います。
「耳が聞こえなくなった女性アナウンサーからの依頼は、彼女自身のために新しい墓をつくってほしいというものだった。彼女とのどこかちぐはぐなやりとりが主人公の日常を静かに侵食していく」

このあらすじを見ても何だかわからない。でも、わからなくても面白いです。

ぜひ読んでみてください。

『彼女のカロート』
荻世いをら/フィルムアート社

【出版社HPより引用】
長く単行本化が望まれてきた傑作小説、待望の刊行。

耳が聞こえなくなった女性アナウンサーからの依頼は、彼女自身のために新しい墓をつくってほしいというものだった。彼女とのどこかちぐはぐなやりとりが主人公の日常を静かに侵食していく表題作「彼女のカロート」。読むことに困難を抱えながら文学に殉じる青年がある〈宝物〉をめぐるシュールな冒険に巻き込まれていく「宦官への授業」。発表時に読者を衝撃と驚嘆の渦に巻き込んだ、1行ごとに読む快楽に包まれる2篇を収録。

彼女はさりげない、かといって愛想を失い切らない──レストランで食事を注文したついでに水を頼むような──口調でこう声をかけた。
「あとお墓下さい」
(「彼女のカロート」より)
「彼女のカロート」は、小説だけでなく、広い意味での「書くこと」を後押しする触媒としての力を発している作品だと思う。本作がさらに広く読まれ、人々にヒントを与えることを願ってやまない。
──千葉雅也(哲学者・作家/本書解説)

当時も興奮し、いままた興奮が新鮮に胸に迫るこのテキストを、もしかすると作者名すらしらなかった新しい読者に手渡せることは、奇跡あるいは僥倖としかいいようがない。
──江南亜美子(書評家/本書解説)

※収録作「彼女のカロート」(『すばる』2010年7月号)、「宦官への授業」(『文學界』2013年12月号)

◆シリーズ[First Archives]
倉本さおり・滝口悠生・町屋良平の3名が選者となり、文芸誌に発表された小説や入手が困難になっている書籍のなかから、あらためて読み直されるべき作品を刊行していくシリーズです。
文学には、発表時に大きな反響を呼びながらも単行本として読まれる機会を持たないまま時間が過ぎていってしまうことが少なくありません。
First Archives は、そうした作品をはじめて書物として残し、文学の記録として手渡していくための試みです。
発表から時を経て、こうして刊行される作品が、新たな読者との出会いを生むことを願っています。
https://www.filmart.co.jp/books/978-4-8459-2529-2/

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