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『ビア・マーグス ビールに魅せられた修道士』【新本和書定価】

¥2,640 税込

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 中世のビールをめぐる歴史と日常をタイムトラベルで見てきたかのようにありありと体験できるミステリ大河ドラマ小説、『ビア・マーグス ビールに魅せられた修道士』をご紹介します。



 13世紀半ばのドイツに貧しい農家の息子として生まれたニクラスはビール作りを志ざし、やがて当代随一の醸造家となり「ビア・マーグス(ビールの魔術師)」と呼ばれるまでに。そして数々の醸造技法を遺して生涯を終えます。幼少期からのライバルにつけ狙われ、天災や事件に翻弄されながら進んでいく彼の生涯を私たちもハラハラしながら追いかけていくうちに、ビールと中世ヨーロッパの歴史に詳しくなってしまいます。

 ビールは中世ヨーロッパでは「飲むパン」と呼ばれたといいます。キリスト教徒、とりわけ修道士たちは、断食の期間中であっても飲むことは許されていて、ひとりあたり数リットルもの量を毎日のように飲んだとか。ビールは人々が生きていく上で不可欠な食糧であり、聖職者を虜にし、ときには大国の政治を左右するほど魅惑的な嗜好品でもあったようです。中世ドイツにおける教会や都市をめぐる政治情勢や大事件とそこでビールが果たした役割、ヴァイエンシュテファン、ザンクト・ガレン修道院といったビール史に重要な場所や人物があちこちにに散りばめられ、物語と史実が重層的に進んでいきます。


 ニクラスは職人として成長するなかで、パン種を煮込むグルートビールに始まり、薬草のビール、現代的なホップ入りビールへと、挑戦の幅を広げていきます。そこに描かれる技法やレシピ、設備の進化もまたリアリティに溢れていて、読み終える頃には醸造にもすっかり詳しくなっているはず。


 著者自身もビール醸造家であり、訳者もドイツの食に詳しくビアソムリエでもあるという本書は、細部まで緻密にビールの世界を描き出してくれます。



『ビア・マーグス ビールに魅せられた修道士』

ギュンター・テメス
 著
森本智子・遠山明子 訳
サウザンブックス社
 刊

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